日米の年金「消費税増税と年金改革-2」
2014年4月から日本の消費税が5%から8%に引き上げられました。2015年10月には10%になる予定でしたが景気に配慮して2017年4月更には2019年4月に延長されました。消費増税の名目は、安定した社会保障費の確保です。その中心は年金改革です。年金改革の主たる内容について前回、(1)消費税が10%になった時点で、年金受給資格期間を25年から10年に短縮される予定であることをご説明しました。仮に10年未満の納付期間しかなくても、海外にお住まいの方は、「カラ期間」「米国年金加入期間」を活用して日本の年金の受給資格を取得できる可能性がもともと大きいのですが、今回の改正でより受給資格を獲得しやすくなるわけです。今回はその続きです。 (2)遺族基礎年金の父子家庭への支給。 これまで、遺族基礎年金を受け取れる遺族は、亡くなった人に扶養されていた「子共のある妻」か「子供」でした。これは、いわゆる母子家庭にのみ遺族年金が支給されることになっていました。子供を持つ夫が妻に先立たれた場合は支給されませんでした。しかしながら、時代の流れに従い、2014年4月 からは「子供を持つ夫」つまり父子家庭になった場合も遺族基礎年金を受け取れるようになりました。最近、共働き世帯が増加している状況のもとで、制度上の男女差を解消するために改正されたものです。 (3)基礎年金国庫負担金を2分の1に恒久化 これまでは、国民年金の老齢基礎年金の給付額は平成21年3月分までは3分の1、その後は2分の1に対して税金で賄われてきましたが、現役世代の保険料負担を軽減しつつ、給付水準を維持するため、給付額の2分の1が今後、恒久的に税金で賄われるということになりました。つまり、老齢基礎年金の受給者の年金額の半分は自身の保険料の支払いによるもので、残りの半分は国(税金)の負担によるものです。そもそも公的年金制度は長い人生、個人の努力では対応しきれないリスクに対して、国民全体で保険料を出し合い、社会全体で支えていく世代間扶養の仕組みです。海外にお住まいの方も日本国籍であれば“任意加入の国民年金”に加入できます。それに加えて“国民年金付加年金制度”に加入することが出来ます。国民年金の一般保険料に加えて付加保険料(月々400円)を納めると付加年金として「200円×付加保険料納付月数」が老齢基礎年金に上乗せされます。これは非常にお得な制度で、海外からも是非加入されることをお勧めします。 (4)国民年金任意加入者の未納期間の合算対象期間への算入 2014年4月から「年金機能強化法」が施行されその主たる内容の4つ目が国民年金任意加入者の未納期間の合算対象期間への算入です。 内容が分かりにくいかもしれませんが、該当される方にとっては朗報です。 1986年(昭和61年)3月以前のサラリーマンの妻は国民年金に加入しなくてもよい制度であったため、多くの妻が未加入でしたが、年金の受給資格(25年)を計算するときはカラ期間として算入されることになっていました。ところが任意加入をしたけれど保険料納付が続けられなくて未納となっていた期間はカラ期間として計算されないという不公平な制度となっていました。そのため受給資格が満たされない妻が多かったのです。これが今回の改正でカラ期間として算入されることになり不公平な取り扱いは改善されました。 この改正で恩恵を受けられた方の例です。現在、遺族年金を受給していらっしゃる68歳のA子さんは、ご自身の老齢基礎年金(国民年金)は受給資格期間が不足で受給出来ませんでした。独身時代国民年金を8年間納付し、結婚後7年間は国民年金には加入していません(7年間のカラ期間となります)でしたが、昭和51年に国民年金に任意加入。1年間保険料を納付しましたが、その後9年間は経済的に余裕がなく保険料の未納が続きました。そのためご自身の加入期間は16年(=8+7+1)しかなく25年に到達せず、ご自分の老齢基礎年金は受給できませんでした。今回の改正で加入期間は16年+9年=25年となり受給資格を満たしました。その結果、国民年金納付済8年間(=7+1)分の老齢基礎年金、年額約15万円を現在もらっている遺族年金と合わせて受給できることになり喜んでおられます。国民年金に加入されていても老齢基礎年金を受給されていない方はこのケースに該当していないかどうかチェックされては如何でしょうか。 消費税の増税により今後日本の年金が老後の生活保障としての機能を着実に果たしてゆくことを願ってこのシリーズを終わりといたします。 9/8/16 「消費税増税と年金改革-1」
2014年4月から日本の消費税が5%から8%に引き上げられました。2015年10月には10%になる予定でしたが景気に配慮して2017年4月更には2019年4月に延長されました。8%への引き上げに伴い、2012年8月に成立した「年金機能強化法」が2014年4月から施行されました。消費増税の名目は、安定した社会保障費の確保です。その中心は年金改革です。 年金改革の主たる内容は(1)年金受給資格期間を25年から10年に短縮(2)平成26年度に基礎年金国庫負担を2分の1に恒久化(3)短時間労働者(パートタイマー)に対する厚生年金・健康保険の適用拡大(4)厚生年金・健康保険等の産休期間中の保険料免除(5)遺族基礎年金の父子家庭への支給です。改革の内容について、海外にお住まいの皆様に関係のある項目を以下説明してまいります。 (1)受給資格が25年から10年に短縮 日本の公的年金(国民年金・厚生年金・共済年金)を受給する為には、原則として各年金制度を通算して25年以上加入していなければ1円も年金がもらえない制度になっています。日本にずっと居住して24年11か月年金を掛けていても1か月足らないために一切の年金を受け取れないのです。ですから、これまで年金受給をあきらめていた人が、一気に年金受給者になれる法律です。これまで当センターに年金の申請手続きを依頼された米国在住の方の中にも、カラ期間の活用や日米社会保障協定の活用をしても25年をクリアーできなかったため、10年改正を心待ちにしておられる方もおられます。その意味でも在米の日本の年金の短期加入者の方にとっても朗報といえますね。これまで日本の年金受給申請をされ加入期間が不足で受給を諦めた方も、今一度見直されることをお勧めいたします。制度の詳細は発表されていませんが、分かり次第当紙面でご説明させて頂きます。但し、この法律の施行は、消費税が10%に上げられて、初めて導入されることになっていますのでご注意ください。 25年という日本の受給資格期間は諸外国と比較しても長すぎると従来から問題となっていました。世界の受給資格期間を見てみますと、イギリス、フランスは無し、ドイツ、イタリアは5年、アメリカ、韓国は10年、スペイン15年です。25年から10年に短縮する背景には、諸外国に比して期間が長いことに加えて、無年金者対策、掛け捨て防止対策があります。次回に続きます。 7/23/16 「ソーシャアルセキュリティー給付制度の変革」
2015年11月2日オバマ大統領はBipartisan Budget Act of 2015(施行日2016年5月1日)にサインしました。その結果ソーシャルセキュリティ(SS)の給付の仕組みが変更となります。皆様にとり老後の生活設計に影響を与える恐れがありますので、その概要をお伝えしたいと思います。 SSの年金額を最大限に拡大するオプションにFile and SuspendとRestricted Applicationと呼ばれるものがあります。 File and Suspendとは標準年齢の66歳に達した時に年金申請(FILE)をし、その後すぐ(実際には同時に)繰り下げ受給(SUSPEND)の申請をすることです。FILEしたことにより、申請者の配偶者(62歳以降)が申請者の最大半額の年金受給が可能になります。一方、SUSPENDにより申請者は自身の受給開始日を繰り下げたことになり、将来受ける年金が増額されることになります。Restricted ApplicationとはFile and Suspend と違い、夫婦の両方とも自身の年金を受け取る資格がある場合(要するに共働きのケース)のみ適応します。 66歳に達した人で、配偶者がすでに(1)年金を受給している、あるいは(2)FILE & SUSPENDしている場合、配偶者年金だけの申請をし、自分自身の年金申請は繰り下げて増額を図るというものです。今回の改正でこの2つのオプションが無くなることになります。 その結果①これまでは自分の年金を申請し同時に繰り延べた場合、自分の年金を将来に向けて増額させながら一方で配偶者は自分の年金に基づく支払いを請求出来ましたが2016年5月以降、自分の年金の繰り延べをすると繰り延べ中は配偶者は、自分が年金受給を開始するまでは年金を受け取ることが出来なくなります。ただし2016年4月まではこれまで通りFile and Suspendのオプションは有効であるため、資格のある方は検討される価値は十分あります。②共稼ぎの夫婦で一方は既に年金を受給しておりもう片方は受給資格がある場合、例えば62歳で年金を申請すると、これまでのように配偶者の受給年金額の半分をベース(標準年齢未満での申請ですから減額されます)にした受給(年金額A)の請求することは出来なくなり(ただし2015年中はOKでした)、そのかわり配偶者の年金額の半分をベースにした年金額Aか自分自身の年金のいずれか高いほうの年金を62歳から受給することになります。この選択をすると選択した時の年金額が生涯受給額として継続することになります。 これまで例えば62歳で配偶者の年金の半分(+減額)を受給しその後66歳(標準年齢)で自分自身の年金受給に切り替えるかさらに70歳まで延ばして増加した自分の年金額を受給することが出来なくなったということです。今回の改正内容は分かりにくい部分がありますが、色々な媒体で採り上げられていますので理解を深めて対応されては如何でしょうか。 1/27/16 「離婚時の厚生年金の分割制度ー3」
離婚時の厚生年金の分割制度の3回目を説明いたします。 では手続きを説明します。1.情報提供の請求 年金事務所に戸籍謄本と年金手帳等を提出して請求すれば、具体的に年金がどのように分割されるのかについて、事前に情報を提供してくれます。提供される情報の内容は、①分割の対象となる婚姻期間中の二人のそれぞれの標準報酬総額②分割可能な按分範囲(上限50%)ですが、50歳以上の方については按分割合を示して希望すれば按分後の年金額の見込み額についても知らせてくれます。50歳以上の方に試算される年金見込み額は、按分割合50%で年金を分割する場合、年金を分割しない場合、希望する按分割合により分割する場合の3つのケースについて表示されます。情報提供の請求は、離婚前でも離婚後でも可能です。また、単独で請求することも二人で共同して請求することもできます。離婚前に請求する場合は請求した本人のみに通知され、離婚後に請求する場合は双方に通知されます。 2.分割割合の合意 婚姻期間中の二人の標準報酬総額の合計額を分割する割合について、合意が必要となります。年金事務所による情報提供の内容を参考にして、年金分割の割合について双方で話し合うこととなります。ただし、婚姻期間中妻が専業主婦であって厚生年金に加入した記録がなく、3号被保険者の期間のみであった場合は合意不要で、按分割合は50%になります。合意ができないときは、家庭裁判所における審判手続き等の裁判手続きにより決定し、審判書等の謄本を得ておく必要があります。 3.公正証書の作成 年金の分割割合を合意して公正証書にするときは、双方公証役場に同道してお互いの意思を公証人に確認してもらい、それを証書にしてその謄本を受け取ります。本人が公証役場に出向けないときは代理人に委任することが出来ますが、印鑑証明または領事館の発行する署名(サイン)証明が必要になります。具体的なことは公証人役場や日本公証人連合会http://www.koshonin.gr.jpにお問い合わせください。 4.年金分割の請求手続き (1)公正証書又は裁判所の審判書の謄本がある場合 ①標準報酬改定請求書②戸籍謄本③公正証書・審判書等の謄本を用意して年金事務所に提出します。 (2)「年金分割の合意書」による場合 (1)の場合の③公正証書・審判書等の謄本の代わりに年金分割の合意書を提出します。この場合は双方が一緒に年金事務所に出向いて身分証明を示して手続きを行う必要があります。双方別々の代理人に委任することもできますが、印鑑証明又はサイン証明が必要となります。 8/16/14
「離婚時の厚生年金の分割制度ー2」
離婚時の厚生年金の分割制度の2回目を説明いたします。 ここで年金分割の注意点を説明します。(1)2007年3月以前に離婚された場合は、分割できません。07年4月以降の離婚であれば、それ以前の婚姻期間も分割の対象期間になります。(2)夫の1/2がもらえるわけではありません。結婚前の夫の厚生年金加入期間は分割の対象になりません。(3)年金計算の基になる報酬額の分割を受けるだけですので、夫婦のいずれかの老齢厚生年金のうち報酬比例部分が増加しますが、定額部分は増加しません。基礎年金は分割の対象外です。(4)妻自身に老齢年金受給権が無ければ夫から分割を受けても、年金を受けることはできません。妻に年金受給権があるかどうかは妻自身の60歳までの年金加入期間等により決まります。日本での年金加入期間(国民年金・厚生年金)と渡米後の60歳までの米国在住期間(日本国籍)を加えて25年以上あるか、又は妻がソーシャルセキュリティに加入した期間と厚生年金の期間を通算して20年以上あることが老齢年金を支給される前提になりますので、それを満たさなければ夫の報酬額の分割を受けてもそもそもの分割の意味がないことになります。(5)妻自身が受給開始年齢(60歳から65歳)にならなければ、年金が支給されません。夫が既に年金受給中であっても、妻が支給開始年齢に達していなければ、分割を受けた部分も含めて妻に年金は支給されません。一方、分割すれば夫の年金は翌月から減額されます。(6)離婚後2年以内に手続きをする必要があります。例外として裁判手続きにより合意分割の割合を決めた場合は、その時2年が既に過ぎていた時は、その審判が確定した日の翌日から1か月以内に分割の請求をすることが出来ます。(7)分割された年金の保険料納付記録は元の夫が亡くなったり、自分が再婚したりしても消えることはありません。再婚すると受給権を失ってしまう遺族年金とは違います。 次に2008年4月から実施された3号分割制度を説明します。2008年4月1日以降の国民年金の第3被保険者(家庭における専業主婦又は専業主夫)期間を対象として、離婚をした際に、その配偶者である第2号被保険者(サラリーマン、OL)の厚生年金保険の標準報酬を自動的に夫婦で1/2ずつに分割するものです。分割についての合意や裁判所の決定は不要で、国民年金の第3号被保険者であった被扶養配偶者から請求があれば分割されます。これは会社等での労働と家事労働は平等であると言う基本的認識に基づいています。 合意分割の対象機関に、3号分割の対象となる期間が含まれている場合、合意分割をした時点で、3号分割の請求があったものとみなされます。従って、合意分割の請求をした場合、改めて3号分割の請求をする必要はありません。この場合、年金分割は3号分割した後の保険料納付記録を基礎として合意分割を行うことになります。このように両制度は併用されます。ただし3号分割の対象となる期間(第3号被保険者期間のうち2008年4月1日以降の部分)だけがある場合は3号分割のみを行うことができ、合意分割を行うことはできません。以上概略の説明をいたしましたが、お分かりになりましたでしょうか。 次回に続きます。 7/25/14 「離婚時の厚生年金の分割制度ー1」 日本では近年、離婚件数が増加していますが、離婚等をした夫婦を対象とした被用者年金の年金分割の制度が設けられました。 この年金分割制度は「合意分割制度」と「3号分割制度」があります。 しかしながら制度として複雑なため、誤解されている点も多く、なるべくわかりやすく説明したいと思います。なお、年金分割では勘違いの代表例は①夫の年金がすべて分割対象になる②専業主婦なら夫の年金は無条件で1/2もらえる。③分割されるのは夫の年金のみ。④分割された年金はすぐ受とれる⑤元の夫が無くなったり、自分が再婚したりすると分割された年金は消滅してしまう 等々です。 まず2007年4月から実施された合意分割制度をご説明します。 ①当事者(元夫か妻のどちらか)からの請求により、それぞれの厚生年金の標準報酬(保険料納付記録)の合計額を二人で分割する制度です。二人の婚姻期間中の厚生年金の報酬額総額をそれぞれ計算し、報酬額総額の多いほうから少ないほうへ分割します。 ②分割の割合は合意により決定します。合意に至らない場合は裁判所で分割割合を決めることが出来ます。分割する割合は、夫婦の標準報酬の合計の50%が上限です。共働きして、夫婦で厚生年金に加入していた期間については、夫婦の合計額の半分が分割後の持ち分の上限となります。簡単に言えば、夫の持分が200万円で、妻の持分が100万円の場合、分割後の妻の持分の上限は、自分の持分100万円に夫の持分の半分の100万円を加えた200万円になるわけではありません。夫婦の合計300万円の半分の150万円となります。さらに50%が上限なので、必ず、その合計額の半分となるとは限りません。 次回に続きます。 3/24/14
「遺族年金の給付の種類と年金額③」
今回は遺族年金として支給される給付の種類と金額についてご説明します。 1.遺族基礎年金の場合 (1)子のある妻への支給額は778,500円+子の加算額(Ⅰ人目及び2人目の子の加算額は224,000円、3人目以降は一人当たり227,900円) (2)子に支給されるとき74,600円+(2人目以降の子の加算額) 2.遺族厚生年金の場合 夫の死亡時に遺族厚生年金の対象となる妻が40歳以上であって、18歳未満の子供がいない場合を例に説明します。
*65歳以上になると経過的寡婦加算として妻の生年月日により一定額が支給されます。遺族厚生年金を受けている妻が65歳になり、自分の老齢基礎年金を受けるようになったときに65歳までの中高年付加加算に代わり加算されます。これは、老齢基礎年金の額が中高齢付加加算の額に満たない場合が生じるときに、65歳到達後における年金額の低下を防止するために設けられたものです。 具体的にお知りになりたい方は、海外年金相談センターにご相談くださ い。 12/16/13 「どんな人が亡くなった時に遺族年金は支給されるのか?②」 遺族年金シリーズの2回目です。最初に、遺族厚生年金を受け取れる遺族の要件を説明します。
遺族基礎年金を受け取れる遺族は、亡くなった人に扶養されていた「子共のある妻」か「子供」です。これは母子家庭が主な対象の制度で、子を持つ夫が妻に先立たれた場合は支給されません。しかしながら、時代の流れに従い、2014年4月からは「子供を持つ夫」つまり父子家庭になった場合も遺族基礎年金を受け取れるようになります。 遺族年金の申請に時効はありません。該当されると思われる方はどうぞ海外年金相談センターにご相談ください。 10/24/13 「どんな人が亡くなった時に遺族年金は支給されるのか?①」 遺族年金は遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。米国に在住されている方を前提に説明いたしますので日本在住の方とは少し異なる部分がありますことご了解ください。 1.遺族厚生年金の受給資格 ①老齢厚生年金をもらっている人が亡くなったとき ②老齢厚生年金をもらう資格がある人が、年金をもらい始める前に亡くなった時 ③厚生年金に加入中の人が亡くなった時 米国にお住まいの方は①と②のケースが多いと思いますが、日米社会保障協定の発効に伴い、③のケースも出てきています。 ① の場合、配偶者などの遺族は一定の要件を満たせば遺族年金をもらえます。 詳しくは後で説明します。 ② は次の場合が考えられます。 厚生年金加入期間が20年以上あるか又は国民年金加入期間と合わせて25年以上ある人は当然②に該当します。 年金加入期間が短い人でも、日本国籍を持っている人は、海外に在住している60歳までの期間(カラ期間)を加算できるので、これが25年以上になればその人も②に該当します。又、日本の年金加入期間と米国の年金加入期間を通算して25年以上ある人も老齢年金をもらう資格がありますので②に該当します。③は2つの場合が考えられます。 米国在住で日本の厚生年金に加入している人は当然③に該当します。これ以外に厚生年金に加入していた人がその後米国に移住し、米国年金加入中に亡くなった場合も日米社会保障協定によって遺族年金を支給されることがあります。 以上のことから、かって厚生年金に加入していたかなり多くの方が、遺族年金の対象になることがお分かりいただけたと思います。 2.遺族基礎年金の受給資格 ① 国民年金をもらっている人が亡くなった時 ② 老齢基礎年金をもらう資格がある人が、年金をもらい始める前に亡くなった時 ③ 国民年金に加入中の人が亡くなった時 以上お分かりのように遺族厚生年金の受給資格と同じです。個々のケースの説明も同様と考えてください。次回はどんな遺族が年金をもらえるのかを説明します。 9/24/13 「棚ぼた排除規定(WEP) Q&A―その1」 日本の年金を受給していると、米国年金の受給金額が減額されることがあります。米国年金の受給手続きをしている過程で減額されることを知り、戸惑いや、憤慨される方が増えています。そこで、減額の根拠となる棚ぼた排除規定WEP(www.ssa.gov/pubs/10045.html)について今回はQ&Aでご説明したいと思います。 Q:どんな場合に減額の対象となるのですか? A:外国(米国外)などで、ソーシャルセキュリティー税(SSTax)が徴収されていない仕事に従事し、その結果としての年金を受け取っている場合です。日本の年金を受給していると、それに該当していると判断され、日本の年金額の一部に相当する額が米国の年金額から減額されてしまいます。 Q:減額の対象は日本人だけなのですか? A: SS Taxが徴収されてない仕事にもとづいて米国外の公的年金を受け取った場合、WEPにより米国人、日本人のみならず全ての外国人が米国年金の減額の適用対象となります。 Q:具体的に対象となる日本の年金はなんですか? A::厚生年金、共済年金等の公的年金だけです。但し、国民年金は個人で積み立てた年金であり仕事に基づいて得た年金ではないので対象外です。私的年金も対象外です。 Q:適用の例外となるケースはありますか? A:その主たるものは(1)遺族年金受給者(2)米国年金加入期間中、30年以上の社会保障上の高額収入(substantial earning under Social Security)を得ていた方の場合です。 Q: 米国年金の加入期間が10年(40クオーター)未満なので、日米の年金加入期間を通算して米国年金を受け取る場合はどうなりますか? A:日米社会保障協定を活用して米国年金を受け取る場合は、本来の年金支給では無いとの判断から減額されません。 Q:WEPと日米社会保障協定は何か関係があるのでしょうか? A:関係はまったくありません。日米社会保障協定が発効したのが2005年10月であり、WEPはそれ以前から適用されておりました。 (次回に続く) 8/17/13 「米軍関係施設で働いていましたが、年金はもらえますか?」
今回は日本の米軍関係施設で働いていた方への情報です。戦後日本では米軍関係の施設で働かれ、その後米国へ渡った方がたくさんいらっしゃいます。その方々が米軍関係施設で働いていた時、厚生年金に加入していたのであれば年金をもらうことが出来ます。米軍関係施設で働く日本人も厚生年金適用の対象となったのは、昭和24年(1949年)4月のことです。ですから、それ以前に働いていた期間は、残念ですが年金の対象外となります。厚生年金の加入期間があれば、これまで説明してきたとおり、米国在住のカラ期間と合算して手続きするか、又は米国の年金に加入していればその期間と通算して請求することができます。ただし、昭和20年代から30年代に働いていた方の年金記録は日本年金機構(旧社会保険庁)での管理が不十分なため、加入員記録が保存されてない場合も多いようです。従って、米軍関係施設で働いていた方についても年金事務所(旧社会保険事務所)で記録を確認できなくてあきらめている方も多いのではないでしょうか。 実は、米軍関係施設で働いていた方については、勤務の記録が独立行政法人・駐留軍等労働者労務管理機構(以下「管理機構」http://www.lmo.go.jp)で保管されていますので、年金事務所で年金記録が出てこない場合は、こちらに照会して証明を発行してもらい、それを以って年金事務所で年金記録を確認してもらうのが早道です。 大正14年生まれのAさんの例ですが、昭和25年から8年間在日米軍の地図局で働きその後、渡米して米国で15年間働きリタイアーしました。当時の社会保険事務所で自分の年金記録を調べましたが、「記録はありません」との回答でした。日本の年金の受給は諦めていましたが、ある時「管理機構」の存在を知り、勤務記録を調べてもらった結果、記録が見つかりました。そこでの勤務記録の証明を付けて年金事務所に提出。日本の厚生年金(8年)と米国年金記録(15年)を合計して20年以上となり日本の年金を受給することができました。 7/26/13 「年金の振込先を日本にしたい」 日本の年金を米国の銀行に振り込むことにより銀行手数料を天引きされ、年金が目減りすることや、日本に一時帰国するときの滞在費などに充てたい等の事情から日本の年金を日本の銀行口座で受け取りたいとご希望される方がいらっしゃいます。 事実、日本の年金受給者の方が、年金振込先を米国所在の銀行とした場合、振り込みがある都度、銀行はハンドリングチャージとして一定の金額(15ドル前後)を徴収しています。しかも65歳からは「老齢厚生年金」と「老齢基礎年金」が同時に別個に振り込まれるため1回につき15ドル×2=30ドル、年6回振り込みのため180ドルの年金額が減額されます。年金額が多くない方には無視できない金額です。そこで、日本の銀行口座への振込みについてお話しいたします。 日本に居住していない人が、日本で開設する銀行口座は「非居住者円預金」です。日本国籍の方だけでなく、米国籍の方も、日本の年金を振り込むための銀行口座を開設することができます。郵便局は取り扱っていません。 1.日本で銀行口座を開設する際の一般的注意事項 (1)手続きには本人が銀行に出向く必要があります。 (2)ご希望の銀行・支店が非居住者預金を取り扱っているかを必ず確認してください。 (3)口座開設をした取引店でのみの取引となります。キャッシュカードは発行されません。したがって、一時帰国の際に良く利用する滞在先に近い銀行で開設するのが便利かと思います。 (4)口座開設の目的をはっきりさせることが必要です。「日本の年金を受け取るため」とか「国民年金の保険料を納付するため」といったことです。 (5)日本国内の通信物の送付先として、連絡先を届けておくことを求められルことがあります。 2.必要な書類等 (1)本人確認書類:パスポート (2)外国住所確認書類:外国運転免許証、在留証明等のいずれか1点(3)口座開設目的確認書類:年金証書、年金手帳等(年金受給目的の場合)保険料納付書等(国民年金の保険料納付目的の場合)(4)印鑑:サインのみでは口座開設はできません。 みとめ印及び実印どちらでも結構です。とは言え、マネーロンダリングを規制する関係から、一般に非居住者円預金口座の開設は厳しくなってきています。 口座開設のため日本に行かれる前に、ご自身なりお知り合いを通じてご希望の銀行・支店が取り扱っているかどうか、必要な書類は何かなど銀行に確認してから手続きに出向くようにしてください。尚、米国在住の方でも日本に銀行口座を残している方は、もちろん年金の振込先をその口座に指定することができますので、引き続き口座を保持することをお勧めします。 6/21/13 「日本の年金の課税はどのようになるのでしょうか②」 米国に居住し日本の老齢厚生年金・老齢基礎年金を受給する方の所得税は、日米租税条約により居住地である米国で納付することになります。年金を支給するとき日本の国内の基準に従って源泉所得税を控除すると二重課税となってしまいますので、それを避けるために租税条約上の手続きを踏めば、日本での源泉所得税を免除することになっていることを前回ご説明しました。しかしながら実は、米国にお住まいで日本の年金を受給しているほとんどの方は、提出の必要ない方です。今回はそのことをご説明いたします。 3.提出省略ができる場合があります。 日本の年金を受給しても、日本の税法で源泉所得税を徴収されない金額の方については提出を省略することができます。新租税条約発効後は原則どおり提出を求められましたが、最近日本年金機構は源泉徴収の対象にならない場合は租税条約上の書類提出を省略できるようになりました。提出省略の可能な源泉徴収されない年金額は次の通りです。(1)65歳未満の方・・年額 70万円未満(2)65歳以上の方・・年額120万円未満(老齢厚生年金・老齢基礎年金合計) 年金を受給している方については、3年ごとに日本年金機構から書類提出のお知らせが届きますが、年金額がこの基準以下であれば、提出の必要はありません。この省略によりForm6166の作成費用$85と手続きの手間が節約になります。 たとえば、年額120万円の年金を受給している65歳未満の方は提出が必要ですが、65歳以上になり年金額が同じであれば提出不要です。逆に、65歳未満では提出不要の方でも、65歳になって年金額が増えたために提出しなければ源泉徴収される場合もありますのでご注意ください。例えば65歳まで厚生年金を受給されていた方で国民年金も加入されていた方の場合、65歳から国民年金が支給開始となり年金額が増額しますのでご注意ください。 提出を求められたときのご自分の年齢と年金額を確認し、提出が必要かどうかを判断していただくことが大切です。省略に該当される場合は、 “年金額が源泉徴収対象額以下なので、租税条約に関する届出書等は提出しません”とご記入の上、日本年金機構に返却してください。 なお、遺族年金・障害年金は非課税ですので、租税条約の手続きは不要です。 また、国家公務員・地方公務員の退職共済年金につきましては租税条約上の源泉徴収免除の取り扱いはありません。年金額が基準を上回れば源泉徴収されます。 6/2/13 「日本の年金の課税はどのようになるのでしょうか①」 日本の年金を受給中の方から、「日本の年金の課税国は日本か米国か」「日本の年金は日本の銀行口座に振り込まれているので、米国では課税対象外と考えてよいか」「日本年金機構から、租税条約に関する届出書などを提出するようにとの連絡が来ているがどうしたらよいか」というご質問を良くいただきます。今回はこの問題を取り上げてみたいと思います。 米国に居住し日本の老齢厚生年金・老齢基礎年金を受給している方の所得税は、日米租税条約により居住国である米国で納付することになります。年金が日本の銀行口座に振り込まれていれも、米国に住んでいる限り米国でIncome Taxの対象となります。 そのため、年金を支給するとき日本の国内の基準に従って源泉所得税を控除すると二重課税となってしまいますので、それを避けるために租税条約上の手続きを踏めば、日本での源泉所得税を免除することになっています。 1.日米新租税条約(2004年7月発効)上の手続き 年金請求書類に加えて次の書類を日本年金機構に提出することになります。 ①租税条約に関する届出書 ②特典条項に関する付表 ③居住者証明書(U.S. Residency Certification、IRS発行Form 6166)の3種類です。すでに年金を受給されている方は、居住者証明書をIRSに申請して提出されたご記憶があると思います。居住者証明書はIRSのForm8802(IRSのHPから入手可能)に必要事項を記入して申請します。 2.書類の提出時期 これらの①~③の書類は、日本の老齢厚生年金・老齢基礎年金を請求するとき、およびその後3年ごとに日本年金機構へ提出することになります。ご質問された方には最初の提出から3年経過したことにより、提出のお知らせが届いたわけです。 これらの書類を提出しない場合は、日本の税法に従って年金の支払いごとに所得税が源泉徴収されることになります。源泉徴収されてもあとで①~③の書類をすれば、その後の源泉徴収はなくなります。すでに徴収された所得税については、還付の手続きも可能です。 (次回に続く) 4/15/13 「将来の年金請求のために準備しておくことは(2)」 前回は将来の年金請求のため準備として、(1)年金の加入記録を整理しておくこと、(2)すべての年金記録を基礎年金番号で統一しておくことについてお話しました。今回はその続きです。 (3)カラ期間の証明の為古いパスポートも保有しておく 年金加入期間が短いとき在米カラ期間を合算して請求することが出来ることをお話してきましたが、在米期間を証明するものとしては次のものがあります。 ①パスポートの出入国記録(出国以降60歳までの期間)、②戸籍の附票(出国時に住民票の転出手続きをしている場合)、③米国にある日本大使館・領事館が発行した在留証明書、④米国政府が発行した居住者証明書、⑤法務省が発行した出入国記録(1973年以降のみ)です。この中で一番簡単なのは①のパスポートの記録による証明です。同じように簡単に入手できるものは②の戸籍の附票による証明です。 在留証明も簡単に入手できますが、過去の住所及び期間を証明する公文書(住所と名前の記載があるもの、例えばTax Return、ソーシャルセキュリティオフィスからの手紙、運転免許証等の組み合わせ)が必要となります。在留届も参考にいたしますので提出されてない方は、すぐに提出しましょう。また、日本国籍を喪失して米国籍を取得した方は、米国公証人により証明を受けるか又は、領事館で在留証明に代わる居住証明を入手することも出来ます。どうしてもカラ期間の証明資料が準備できないときは、以前説明しましたように、米国年金に加入していれば日米の年金加入期間を通算して年金の請求をすることが出来ます。 (4)年金事務所に米国の住所を届けておく 年金事務所に米国の住所を届けていない方(年金受給中の方を除きほとんどの方が該当)は住所届けを米国に変更しておきましょう。その結果、日本年金機構から「年金定期便」や重要な通知が届くようになります。届出先は〒168-8505 東京都杉並区高井戸西3-5-24 日本年金機構本部 業務渉外部外国給付担当係です。全国にある年金事務所でも変更手続きが出来ますので、一時帰国された時訪問するか、日本の身内の方に委任状を渡しその変更手続きをすることも出来ます。 3/19/13 「将来の年金請求のために準備しておくことは(1)」 1.年金の加入記録を整理しておく 年金の受給請求手続きで重要なのは、ご自身の年金加入記録が全部あるかどうかということです。これを確認しておくことは事前準備として大切なことです。 その為にはまず ①被保険者証・年金手帳を事前に探して確保しておきましょう。厚生年金の加入者は被保険者証が、国民年金は年金手帳が交付されます。被保険者証や年金手帳があるということは年金に加入していた証拠です。年金手帳は再発行申請をすることもできます。但し、年金受給手続きは年金手帳が無くとも基礎年金番号があればできます。 ②勤務記録を整理しておきましょう。被保険者証や年金手帳がない場合、厚生年金であれば勤務先名、所在地、勤務した期間を、国民年金であれば加入していた時の住所、加入期間を正確に年金事務所に申し出て年金加入記録を検索してもらい自分の記録に間違いがないかチェックしておく必要があります。加入記録の確認方法は、日本の年金事務所の窓口で調べてもらう方法と日本年金機構のHP(http://www.nenkin.go.jp/)上の“ねんきんネット”を通じて確認する方法があります。日本に一時帰国された場合に、年金事務所を訪問されるか、委任状を書いてどなたかに調査を依頼することもできます。尚、年金記録については、旧社会保険庁によるずさんな管理によって、持ち主不明の年金記録が約5100万件が見つかり大問題となり、2007年から解明が行われて来ましたが、依然2222万件(2012年9月時点)が未解明の状態にあります。 2.すべての年金記録を基礎年金番号で統一してもらう 以前は、一人でいくつもの年金番号を保有してしまうケースがありましたが、1997年基礎年金番号制となり各人一つの年金番号に統一されました。1996年12月から1997年1月の間、日本にいなかった方は、付番されていないことが多いと思います。1996年以前に日本を出国して基礎年金番号を持ってない方は、年金記録をチェックして、すべての年金記録を基礎年金番号で統合してもらうようにしましょう。 (次回に続く) 2/11/13 「日本の年金に関する最近行われた法律改正(2012年)より」 日本の年金に関する最近行われた法律改正(2012年)で、皆様に関係のある項目をご説明いたします。 1.年金加入10年で受給資格取得へ改善 米国の年金と同様に加入10年で年金の受給資格が取得できるようになるという話です。年金機能強化法の成立により、平成27年(2015年)10月から、年金の受給資格期間をこれまでの25年(300月)から10年(120月)へ短縮する改善策の実施が予定されており、10年以上受給資格期間がある方は納付された保険料等に応じて年金の給付を行なうこととされています。年金機能強化法は、今年(2012年)8月10日に成立し、今後公布される予定となっています。詳細の発表を待つ必要はありますが、納付済期間、免除期間及び合算対象期間(カラ期間)の合計が10年(120月)に達すれば、平成27年10月から年金を受給することが可能となります。 これにより日本国内外で年金の受給者数はかなり増加すると思われます。米国にお住まいの方は「カラ期間の活用」「協定の活用」という恩典が従来からありますが、これにより受給資格取得の機会が更に広がることになります。詳細が決まりましたらご案内させていただきます。 2.国民年金保険料の納付可能期間延長について これまで、国民年金の保険料は2年を過ぎると時効により納めることができませんでしたが、法改正による時限措置として今年(2012年)の10月1日から3年間に限って、国民年金保険料の納付可能な期間が2年間から10年間に延長(後納制度)されます。過去10年間に保険料の未納期間がある方や国民年金の未加入期間がある方が対象になります。 海外にお住まいの方で、この保険料後納制度を利用することで、年金額を増額したい方、年金の加入期間が合算して25年にならず受給をあきらめている方には吉報と考えたのですが、残念ながら海外在住期間は後納制度の対象外とのことです。その理由は、この制度が年金額の増加を目指しているものでなく、年金の受給者の増加を目的としているからです。つまり日本国籍で海外に在留している期間はカラ期間として既に年金の受給資格の算定上認めているからです。 12/18/12 「協定でもらいやすくなった日本の年金」
前回までに日本の年金を受給するには、「加入期間」と「年齢」の2つの要件があり、「加入期間」は、米国在住の期間をカラ期間(20歳から60歳までの間に日本国籍で海外に在住していた期間)として合計して25年を満たすか、または日本と米国の公的年金に加入していた期間を通算して25年以上あれば要件を満たすことをお話しました。日米の年金期間を通算する方法は、日米社会保険保障協定の発効(2005年10月)により新たに認められた方法です。この協定によりどんな方が恩恵を受け年金をもらえるようになったのか、具体例を交えてお話したいと思います。 まずは(1)カラ期間の使えない大正生まれの方の例です。昭和61年の年金制度の改正で、海外在住者のカラ期間適用制度が出来たのですが、大正生まれの方は対象外となり、カラ期間が認められておりません。大正生まれのEさんは、渡米後、約21年米国の会社で働きSS Taxを払っていました。母が日本で国民年金の保険料を払ってくれていたことを覚えていて、調べてみると国民年金の加入期間は5年、日米の年金期間を合計すると26年となり、日本の年金をもらうことが出来ました。Eさんは「亡くなった母の気持ちを生かすことが出来た」と大変喜んでいらっしゃいます。 次に(2)カラ期間はあるが短くて年金請求ができない方の例です。 昭和生まれのSさんは日本で5年間会社で働いて渡米し5年後に米国籍を取得し、日本国籍を喪失しました。そうするとカラ期間は国籍喪失までのわずか5年間となり、日本での年金加入期間5年を合計しても10年で、協定発効以前までは、受給資格に必要な加入期間25年を満たすことは出来ませんでした。しかしSさんは米国年金に20年以上加入していたので、協定により日米の加入期間を通算して25年以上となり日本の年金をもらえるようになりました。 これらの事例でお分かりのように、日米社会保障協定により多くの方が恩恵を受けることが出来るようになりました。日本で短期間年金に加入されていた方も、是非この恩恵を受けられるよう見直されてはいかがでしょうか。 10/16/12 「年金の繰上げ繰り下げとは」 前回、年金の支給開始年齢は、国民年金は65歳、厚生年金・共済年金は経過措置として60歳から支給開始であることを説明いたしました。本来は公的年金(国民年金、厚生年金、共済年金)の支給開始年齢は65歳からですが、厚生年金、共済年金は経過措置として昭和36年4月1日(女性 昭和41年4月1日)以前に生まれた方は60歳から64歳までの間に、生年月日に応じそれぞれ支給開始となりますのでご注意下さい。手続きは支給開始年齢の誕生日以降可能となります。時効は基本的には5年ですので、それまでに手続きを済ませるようにしてください。 ところで、国民年金、厚生年金に関して、65歳から支給開始となる方でも、受け取りを60歳以降に繰上げて希望する年齢から受給すること(繰上げ請求)が出来ますが、年金額は最大30%減額されます。また、逆に65歳から支給される年金を66歳以降70歳になるまで受給を遅らせて受け取ること(繰下げ請求)が出来ますが、この場合年金額は最大42%増しの年金を終身受けることが出来ます。なお、60歳から64歳までに経過的に支給される年金は、繰下げすることはできません。 繰下げ請求の手続きを説明します。既に年金を受給されている方には海外のご自宅に、日本年金機構から65歳になる時に繰下げ希望の有無について問い合わせる「年金請求書」(ハガキ)が送られてきます。そのハガキを返送しなければ、年金を66歳以降に繰下げて受け取ることを希望する意思表示として判断されます。その後繰り下げ中の年金の受け取りを日本年金機構に請求するまでは支給が中断されます。なお、繰下げする場合、加給年金が繰り下げ期間中は支払われなくなりますので注意する必要があります。年金版家族手当とも言われる加給年金は20年以上加入した人で、65歳未満の配偶者がいる場合などに支給されます。余談ですが、条件である20年以上加入期間の算定上、実際に日本の年金加入期間に加えて米国の年金加入期間も加算できますので、海外にお住まいの方でも受給できる方が多くいらっしゃいます。 一方、米国年金の場合も同様に繰上げ、繰下げの制度があります。標準退職年齢は誕生日が1937年以前の場合は65歳、1038年から1959年の場合は65歳2か月から66歳10か月、1960年以降は67歳です。減額を覚悟すれば62歳から受給を開始することができます。標準退職年齢以前に年金受給を開始した場合、最初の36か月の繰り上げ退職月に対しては、繰り上げ月数×5/9%の減額となります。それ以前の繰り上げ退職月に対しては、繰り上げ月数×5/12%の減額となります。逆に受給を標準退職年齢より後に遅らせた場合年金は誕生日ごとに異なる増額率が適用されます。1943年以降の誕生日の方には年間8.0%の増額となります。 9/10/12 「何歳から年金はもらえるのでしょうか?」 これまで短い加入期間でも日本の年金が受給できること、米国籍でも受給条件を満たせば日本の年金を受け取れることを説明して参りました。今回は何歳から日本の年金は受け取れるのかをお話します。 本来は、公的年金(国民年金、厚生年金、共済年金)の支給開始年齢は65歳からです。ただし、現在、国民年金(自営業、無職の方)は65歳ですが、厚生年金(会社勤務の方)や共済年金(公務員の方)は経過措置として60歳から支給開始となっています。厚生年金の経過措置について説明します。現在1年以上加入している方は、60歳から支給されていますが、生年月日により徐々に65歳支給に移行されます。加入期間が1ヶ月以上1年未満の方は65歳から支給開始となります。 具体的には、昭和16年4月1日以前に生まれた方は原則どおり60歳からですが、昭和16年4月2日以降に生まれた方は支給開始時期が生年月日により段階的に遅れ(繰り下げられ)、いずれ65歳から支給開始となります。 厚生年金は定額部分と報酬比例部分により構成されていますが、まず、定額部分の支給開始年齢の遅れ(繰り下げ)が昭和16年4月2日以降に生まれた方から順次始まり、昭和24年4月2日以降に生まれた方からは定額部分は65歳から支給開始となります。次に報酬比例部分の支給開始年齢の遅れ(繰り下げ)が昭和28年4月2日以降に生まれた方から始まり、昭和36年4月2日以降に生まれた方からは年金は定額部分、報酬比例部分共にすべて65歳支給開始となります。以上は男性の支給開始年齢ですが、女性については男性の年齢よりそれぞれ5年遅く支給開始の繰り下げが始まります。 今回は少し複雑でしたが、ご自身に当てはめて考えると分かり易いと思います。 一方、米国年金の場合は誕生月が1937年以前の方は、65歳から支給されますが、誕生月がそれ以降の方は、少しずつ先になります。例えば誕生年が1943年から1954年の方は66歳からとなり、最終的には誕生年が1960年以降の方は67歳から支給となります。又、標準退職年齢以前に年金受給を開始したい場合は減額を覚悟すれば、最大62歳から受け取ることができます。最初の36か月の繰上げ退職月に対しては、繰上げ月数×5/9%の減額。それ以前の繰上げ退職月に対しては、繰上げ月数×5/12%の減額です。つまり3年早めれば20%の減額、5年早めれば30%の減額となります。 日本の年金も65歳から支給開始となる方でも、受け取りを60歳以降に繰上げて受給することができますし、また、逆に65歳から支給される年金を70歳になるまで受給を遅らせて受け取ることもできます。次回ご説明いたします。 8/14/12 「米国籍でも日本の年金はもらえますか?」
前回は、短い加入期間でも日本の年金が受給できる「幸せの方程式」の説明をしました。今回は「米国籍でももらえますか」という質問にお答えします。 結論から言えば、受給条件さえ満たせば、国籍に関係なく、米国籍でも日本の年金を受け取ることが出来ます。 日本の年金を受け取るには、国民年金・厚生年金・共済年金の加入期間の合計が原則25年以上ある必要があります。25年に満たない方は受給資格を得るために2つの方法があります。まず第1に、「カラ期間」又は「米国年金加入期間」を活用して受給資格をクリアーする。第2に、「国民年金」へ加入(日本国籍の方に限られます)して、年金額を増加し受給資格を取得する方法です。 その際、①米国年金の加入期間を活用して日本の年金を受給する方であれば、いつ米国籍に変更しても問題ありません。しかし②カラ期間を活用して日本の年金を受け取る方は、日本の保険料納付期間とカラ期間の合計が25年以上の受給条件を満たすまでは日本国籍のままでいる必要があります。 具体例でご説明します。 A子さんは日本で5年間働いて、40歳の時米国に移住しました。A子さんが年金を受給する為には加入期間が20年(=25年―5年)不足していますので、それをクリアーする為に、カラ期間(20歳から60歳までの間に日本国籍で海外に在留していた期間)を活用する場合を考えてみます。 A子さんが米国で勤めることなく例えば55歳のとき米国籍を取得した場合は、カラ期間は15年でストップしてしまいます。その為、A子さんは55歳で国籍変更をせず、60歳以降に国籍の変更をすればカラ期間20年以上が確保され、加入期間は5年+20年=25年となり、年金の受給資格を取得できることになります。 尚、A子さんは55歳で米国籍を取得した場合でも、その後新たに働くことによりSSTaxを支払い米国年金の加入期間5年以上を確保すれば、同様に年金の受給資格を確保できます。 最後に、前回の説明でふれた「カラ期間」(=合算対象期間)について問い合わせを頂きましたので説明いたします。 年金などの受給資格期間をみる場合に、期間の計算には入れるが、年金額には反映されない期間のことです。年金額に反映されないため、いわゆる「カラ期間」と呼ばれています。カラ期間には、(1)昭和61(1986)年3月以前に、国民年金に任意加入できる人が任意加入しなかった期間、(2)平成3(1991)年3月以前に、学生であるため国民年金に任意加入しなかった期間、(3)昭和36(1961)年4月以降海外に日本国籍で住んでいた期間、などがあります。(いずれも20歳以上60歳未満の期間)。 7/10/12 「短期加入でも受け取れる日本の年金」 日本の年金を受け取るには、国民年金・厚生年金・共済年金の加入期間を合計して25年以上ないと、原則として年金の受給資格はありません。でも海外にいらっしゃる皆さんは諦めるのは早いのです。日本で短期間でも年金に加入した後、米国にいらっしゃった方は、幸せの方程式が用意されているのです。以下、加入期間25年のハードルを「米国(海外)在住期間」または「米国年金加入期間」を活用してクリアする、2つの方程式をご説明します。 ① カラ期間活用方式:(日本の年金加入期間)+(日本国籍で米国在住の60歳までの期間)=25年以上 日本の年金に加入しなかった「米国在住期間」を、年金額には反映しないという意味で「カラ期間」といいます。米国滞在中、国民年金に任意加入した期間は、当然「日本の年金加入期間」に入ります。 ② 日米社会保障協定活用方式:(日本の年金加入期間)+(米国年金加入期間)=25年以上 これは、昨年の10月に日米社会保障協定が発効したことにより新しく出来た制度で、日本人、元日本人を問わず適用となります。米国年金加入期間のうち、日本の年金にも加入していた期間は「日本の年金加入期間」に含まれ、「米国年金加入期間」から除きます。 この2つの方式を活用することにより、大半の方が年金の受給に必要な加入期間25年の問題をクリアーできます。あとは支給開始年齢(支給開始年齢は次回で説明します)になれば、年金が支給されます。但し、年金額はあくまでも保険料を実際に負担した期間、及び負担した額により決定されます。では具体例として方程式をAさんのケース(日本で10年間厚生年金に加入。50歳で渡米し15年間ソーシャルセキュリティーに加入。現在65歳)に当てはめてみましょう。①で計算すると(日本の年金加入期間=10年)+(米国在住の60歳までの期間=10年)=20年となり25年以上の要件を満たしません。しかし、②で計算すると(日本の年金加入期間=10年)+(米国年金加入期間=15年)=25年となり25年以上の要件を満たします。Aさんの場合、2つの方程式のうち、②の日米社会保障協定活用方式、つまり米国年金加入期間の活用により年金受給要件を満たし、日本の年金を得ることができるのです。 なお、米国に住んでいる方は国民年金の加入義務はありませんが、65歳まで任意加入することが出来ます。これにより年金加入期間と年金額を増やすことができるのです。 6/10/12 「米国外滞在の米国年金受給への影響」
![]() 最近問い合わせが目立つのが、日本帰国に際し、米国年金が引き続き支給されるかどうかソーシャルセキュリティー(SS)オフィスに問い合わせたところ、次のような回答であったが本当かというものです。具体的には、「日本でも継続して米国年金を受給できるが、6か月毎の米国入国が条件である」「米国を30日以上離れると米国籍者でない限り年金は支払われない」「米国年金は、米国籍があれば100%支給されるが、グリンカード保持者の場合は25%減額される」「米国籍者やグリンカード保持者以外には米国年金支給は支給されない」というものです。こういったSSオフィスの回答はすべて間違いです。残念ながらこの様なSSオフィスのいい加減な対応は、全米に及んでいると思われ、しかも、かなり以前から繰り返されています。年金の受給資格を維持するため仕方なく米国籍を取得したと残念がる方に少なからずお会いしています。
![]() さて、米国SSA(米国社会保障庁)は米国外滞在者に対する米国年金の支払いについて(What happens to your right to Social Security Payments when you are outside the United States)HPで次の様に説明しています。 (1)米国籍者の場合、受給資格さえあれば米国外に滞在していても米国年金を支払います。(原則、米国籍でないと年金は支給されません)但し、あなたが次の国民であるなら、米国外にどれだけ滞在しようと、受給資格さえあれば米国年金は引き続き支払われます。(例外対象国)日本、オーストリア、イスラエル、フランス、韓国等21カ国 (2)あなたが米国籍者でなく、日本、フランス、メキシコ、ブラジル等77カ国の国民である場合、6か月以上米国外に滞在した場合、次の例外国を除き、米国年金の支払いは米国を離れた6か月後にストップします。(例外国)現在、米国が社会保障協定を締結している国 日本、オーストラリア、フランス、韓国等21カ国。 以上から、日本国籍者は米国外に住んでいても米国年金の受給資格さえあれば、年金を受給できるということです。そして年金受給者の当惑は、SSオフィスの担当者がこの例外規定を理解しないまま対応した結果ということです。老後の生活の基盤である年金の制度については、正しい理解のもとに対応してもらいたいものです。 5/19/12
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海外年金相談センター代表
市川俊治 【無料相談・問い合わせ先】 海外年金相談センター 市川俊治(Shunji Ichikawa) http://nenkinichikawa.org E-Mail :shunjiichikawa@gmail.com 〒162-0067 東京都新宿区富久町15番1-2711号 TEL&FAX 03-3226-3240 ウェブサイト http://nenkinichikawa.org/ |